CEO Blog #13「アフリカオープンイノベーションチャレンジ①:応募に至る動機、そして本プロジェクトにかける想い」

先日リリースでもお伝えしましたが、JICA主催のアフリカオープンイノベーションチャレンジが募集するSHEP(市場志向型農業振興)アプローチの効果を高める、農業普及員及び農家によるマーケティングを支援するイノベーションに当社のソリューション案を採択頂きました。現在、タンザニアでのPOC(実証実験)に向けて、現地の農家やバイヤー、農業普及員など、将来のユーザーにデプスインタビューを実施している段階です。実際のインタビューはもちろんのこと、インタビュー対象者の決定から、フローの構築、インタビュー内で紹介するMVP(必要最小限の機能を備えたプロダクト)の開発に至るまで、JICA職員、JICA国際協力員、TANSHEP専門員、国内及び現地のコンサルタントといった、本プロジェクトに関わるさまざまな方と共に作り上げています。

TANSHEP マーケティングプラットフォーム「Anzia Sokoni(スワヒリ語で「まず市場」から)」MVPのイメージ

コロナ禍で現地への渡航が制限される中で、開発前のリサーチを実施できるか不安はありましたが、多くの関係者のお力添えを頂き、ユーザーのニーズに合致するソリューション開発には不可欠となる現地のインサイト獲得に向けて、順調に進んでおります。これまでのプロセスにおいても新たに学べた事は多く、今後の海外を対象としたデザイン思考に基づくソリューション構築の新たなアプローチになると確信しています。今後、インタビューの結果を元にMVPを完成、POC(実証実験)と進んでいくプロジェクトですが、本ブログでも随時アップデートしていければと思います。

インタビューを含む全ての工程に参加する本プロジェクトのチームメンバー

さて、今回の対象となる「SHEP(市場志向型農業振興)プロジェクト」は、小規模農家の「作って売る」から「売るために作る」への意識変革を起こすために、心理学の動機付け理論を重視しています。これは、金銭的な報酬などの「他者からのご褒美」といった外発的な動機付けではなく、「自律性(Autonomy)」や「コンピテンス(Competence)」、「関係性(Relatedness)」といった内発的な動機付けが、小規模農家が育ち、サステイナブルな効果をもたらすという理論です。当社が開発する農家、バイヤー、農業普及員に対して開発するソリューションも、この理論をベースとした仕組みが求められており、そのためにも想定ユーザーに対して、どういった仕組みでこの三つのモチベーションを刺激することができるのか?それを明らかにするために、デザインリサーチは不可欠なプロセスとなると考えています。

図:JICA資料より

ということで、今回のCEOブログのテーマは「モチベーション」。アフリカオープンイノベーションへの挑戦に対する動機付けとなった3つの偶然と、本プロジェクトにかける想いについてお話したいと思います。

① 元ガーナ青年海外協力隊との出会い

デリバティブ時価情報を扱う、英国に本社を持つ金融データ提供会社の日本支社の立ち上げから、私は外資系のデータスタートアップのキャリアをスタートしました。当時はリーマンショックの直後ということで、公正な時価情報に対する価値観が大きくシフトするというタイミングもあり、今振り返ると、特にデータビジネス、そしてスタートアップでの働き方という面で、非常に貴重な経験をさせてもらったと心から思います。しかし入社当時は、社会人未経験かつ専門外ということもあり、「なんでこんなところに・・・」という想いで毎日過ごしていました。

その時に、心の救いであり、まさに戦友と言える存在になったのが同時期に入社した同期でした。彼女は、JICAの青年海外協力隊として2年過ごしたガーナから帰国したばかりの、同様に専門外のツワモノでした。今では考えられないくらい強制的な残業が当たり前の会社でしたが、彼女は仕事の合間にガーナでの体験や現地の人の温かさ、なによりも、その経験が今の自分を支えていることなど活き活きと話してくれました。そんな話を聞くことは、その当時の自分にとっては何よりも支えであり、自分もいつかは!という気持ちが芽生え、色々調べだしたのもそのころからでした。

② アフリカマイクロファイナンスへの挑戦、そして挫折

彼女がその会社を退職し、次の道を歩みだした約1年後、ゼロから1へと成長した約5年務めた会社を退職し、次の道を進もうとして転職しましたが、訳あって退職。さて、次はどうするか?というときに、アフリカでのマイクロファイナンス関連の青年海外協力隊の募集を見つけました。当時、ムハマド・ユヌス氏のグラミン銀行での取り組みに対する興味や、自身の金融業界での経験で何かできるかもしれない?自分も元同期のような経験や成長ができるはずだ!と想い、転職活動の合間に、説明会に参加したり、色々情報収集をしたりして過ごしていました。

しかし結果、応募もせずに辞めてしまいました。直前で臆病な気持ちになってしまったこと、そして結局今の自分の経験や知識では、現地に派遣して頂いたとしても、結局何も役に立たずに自己満足で終わってしまうと思ってしまったし、おそらくそうだったと今でも思います。青年海外協力隊を、どこか現実から逃げるための口実として考えている甘い自分がいたのでしょう。そんな考えで、国際協力や社会課題を解決できるわけがない。

③ グローバルデータプラットフォーム開発会社の経営と元JICAイランの社員との出会い

その後、アンケートパネルマーケットプレイスを開発するスウェーデン発のスタートアップの日本支社立ち上げに参画し、0→1の成長に身をもって経験し、5年前にグローバルアンケートプラットフォームの開発するスタートアップを起業し、今に至ります。

海外の市場調査やCX(顧客体験)アンケート、ゼロパーティデータのプラットフォームなど、既存のプロダクトとサービスを組み合わせて、アンケートの仕組みの効率化に関する提案に明け暮れる中、JICA主催のオープンイノベーションチャレンジの募集を昨年の暮れに知りました。当時、ベトナムの開発拠点と連携し、一からプロダクトを開発するという受託開発事業を正式にスタートしたばかりのタイミングでした。よって、小規模農家のデータ収集から共有を効率化し、データの効果を最適化するソリューションを開発する上で、足りない部分は一から開発することができるため、本プロジェクトが求める既存の課題を解決することができる提案ができると確信しました。

その時、もう一つ面白いことが起こりました。当時人員拡大のため採用活動を行なっていましたが、その中にJICAイラン10年の勤務を経て、国内のJICA事務所に勤務をしている方からの応募があったのです。スタートアップの経験しかない自分にとって、クライアントのニーズがわかり、そして何よりも海外で国際協力の経験がある人が社内にいる方が確実にプロジェクトを遂行できるし、何よりもこのタイミングでこの方からの応募は、ただの偶然だと片付けるにはもったいないと思えるタイミングでした。

タンザニアの現状のネット環境や、デジタルデバイスの保有状況、読み書きのリテラシーなど、様々なニーズを抱える小規模農家の方に対するソリューションを提案するのは、今回が初めてです。しかし、当社のビジネスモデルや開発体制、スワヒリ語でのタンザニアにおける市場調査の経験やデジタルデバイドを考慮したソリューション開発などのチームとしてのこれまでの実績、そして何よりも、自分のキャリアの中での様々な出会いや偶然が背中を押し、今回のチャレンジに応募するのは今しかないと、確信しました。そして、これが今回の応募への動機です。

どのような仕組みがあれば、自律的に市場に出向き、市場情報を収集し、仲間に共有し、市場情報を元にしたビジネスを行うという意識改革が実現するのか?今回のインタビューでは、参加者に対して開発するソリューションを使いたいと思う動機について聞いています。

中には、お金がもらえたら、嫌々でもデータを収集するといった外発的な動機付けを求めるユーザーがいるかもしれません。しかし、今回の案件に挑戦した本人として、断言できます。内発的な動機によって取ったアクションは、結果的に、短期ではなく長期的に良い効果をもたらすと。その経験を誇りにSHEPの重視する内発的な動機を刺激する仕組みをチーム一体となり共創していきます!

次回はデザイン思考で開発するTANSHEP マーケティングプラットフォーム「Anzia Sokoni」の最初の難関、「農家、バイヤー、農業普及員に対するオンラインデプスインタビュー」の様子をご紹介できればと思います。

オンラインデプスインタビューでMVPのイメージを紹介している様子

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