本記事では、2020年9月16日に開催したSyno主催のオンラインウェビナーSyno Academyの記念すべき第一回の内容をレポート形式でご紹介します。今回のウェビナーのテーマは「データドリブンなマーケティングで越境ECを成功に導く」。新型コロナウイルスの影響でインバウンドが激減したことにより、オンラインで海外の消費者に向けて販売ができることから再注目されている「越境EC」におけるデータ活用についてディスカッションをしました。
Syno academyとは?
本記事では、2020年9月16日に開催したSyno主催のオンラインウェビナーSyno Academyの記念すべき第一回の内容をレポート形式でご紹介します。今回のウェビナーのテーマは「データドリブンなマーケティングで越境ECを成功に導く」。新型コロナウイルスの影響でインバウンドが激減したことにより、オンラインで海外の消費者に向けて販売ができることから再注目されている「越境EC」におけるデータ活用についてディスカッションをしました。
登壇者プロフィール

株式会社Picaro 代表取締役 下平季位 氏
アマゾンジャパンで10年間勤務後、中国越境EC最大手のネットイースカオラの日本法人代表を経て、2018年からアマゾングローバルプラットフォームを活用した日本メーカーの海外進出のサポート事業を展開するPicaro Incを設立。Picaro Marketing USAを兼任。Helium10のアドバイザーメンバー就任。
目次
1. 越境ECの現状と課題(下平氏)
- グローバル展開が求められる時代の越境ECの仕組み
- 過去と現在の越境ECの参入障壁の違いから見る越境ECのチャンス
- コロナ禍とECの需要について
- 越境EC戦略における課題
2. 越境ECにおける失敗と、データによる可能性
- コロナ禍で現地の消費者の声を掴みにくくなっている
3. 越境ECで活用できるデータを取得するためのシステム紹介
- Helium10 を活用して、海外amazonでの市場規模を把握
- グローバルアンケートシステムSyno Toolを使用したコンセプトテスト
越境ECの現状と課題(株式会社Picaro 代表取締役 下平氏より)

グローバル展開が求められる時代の越境ECの仕組み
インターネットを使って日本の商品を海外で販売することを越境ECと呼びますが、越境ECと一口に言っても、様々な販売方法があります。越境ECの主要対象国である中国とアメリカを比較すると、中国の場合、在庫保管場所を日本にするか中国にするかでECプラットフォーム、輸出手段、運用場所や運用者も異なります。これに対しアメリカは、Amazonを介して越境ECを行う場合、在庫をアメリカに保管した状態でも日本で店舗運用を行うことができます。(その他詳しい情報は上記の表をご覧ください。)
過去と現在の越境ECの参入障壁の違いから見る越境ECのチャンス
以前中国のEコマース企業であるネットイースカオラの日本代表をしていた下平氏は、当時と比較すると、現在は様々な点で越境ECをしやすい環境が整っていると説明します。以前の越境ECの参入障壁が、現在どのように変化しているかを以下にまとめました。
・情報の充実
越境ECや各国の状況を発信するキュレーションサイトが充実したことで、様々な情報にアクセスができるようになりました。また、facebookコミュニティなど活用することで、他のメーカーの成功・失敗体験の情報が得られます。
・Toolの充実
Eコマースプラットフォームのshopify、Amazonでの販売支援ツールを提供するソフトウェアHelium10、オンライン送金、デジタル決済のサービスを提供するPayoneer など、越境ECを始めるためのプラットフォームやツールが溢れています。
・Platformerの日本支社
アリババ、ネットエスコアラなどのプラットフォーマーが日本支社を立ち上げたことで、日本国内で日本メーカーをサポートする体制ができました。
・サポート企業
他国のECサイトで販売するにあたり、国ごとに定められたルールや義務を遵守する必要があります。以前と比べ、事務的な手続きから法律、規則の遵守まで、包括的に越境ECをサポートする企業は格段に増えています。
・マーケティングオートメーション
広告運用などがオートメーションされることから、ツールを使いこなることができれば、日本からでもマーケティングがしやすくなりました。
・フリーランス
プロフェッショナルのフリーランサーからの助けを借りることで、会社で足りていない部分を補完しながら越境ECを進められます。
コロナ禍になりECの需要が大きく拡大している現状
日本だけでなく世界的にECの需要は上がっており、2020年7月30日時点でAmazon.comの売上は前年同期比40%上昇、shopifyの売上は前年同期比97%も上昇しています。また今後もEC事業の需要は上がっていくと予想されます。
越境EC戦略における課題
以前より越境EC始めやすくなった中で、越境ECを行うにあたり気をつけたい点や課題点は以下の通りです。
・「思う」「だろう」
現地消費者のニーズ把握における課題の一つとして、思いこみが先走ってしまう点が挙げられます。例えば、
「Made in Japanだから売れる(だろう)」
「現地の知人がいいと言っていたから売れる(だろう)」
「ゴールドが入っているから中国で売れる(だろう)」
海外展開したいという心意気はとても大切ですが、思い込みだけでは商品は売れません。現地での需要があるか、販売方法は適切か、などの情報収集を事前に行う必要があります。
・情報収集
今日、情報収集を簡単に行うことができる環境が整っています。様々なツールを知っていれば、そこから事前にデータを取得することができるのです。どのツールを使えばいいのかわからない、そのツールを使って何が得られるのかわからない場合は、各会社のセミナーを受けてインプットを行いましょう。
・適切なパートナー
越境ECをサポートしてくれる企業が増えてきたからこそ、信用できるパートナー探しが重要です。第三者の言葉を鵜呑みにせず、適切なコンサルタント、サポート企業を探すのが課題です。
・覚悟の不足
越境ECを行うにあたり、メーカーが主体性を持つことが何より大切です。サポート企業はあくまでサポートを行うためにあり、失敗をしてもメーカーが全ての責任を取る覚悟が必要です。その覚悟の上で、メーカーが戦略を立てアクションをし、サポート企業と二人三脚で越境ECを行いましょう。
越境ECにおける失敗と、データによる可能性
続いて、弊社Syno Japan 代表取締役の長野と下平氏のパネルディスカッションが行われました。以下は、当日のパネルディスカッションを一部を抜粋したものです。
Q1: 越境ECのよくある失敗について教えてください
Syno 長野: 弊社の立ち位置からお話しさせていただくと二点あると思っていて、一つはやはり「日本はこう、だから海外もそうであろう」という日本の基準をそのまま海外に持っていくというところがよく見られるのかなと思います。それが全て間違いというわけではないのですが、この考え方が原因で失敗してしまうところがあると思います。
日本の越境ECの比較対象として韓国の例を挙げると、韓国企業はアメリカのECへの進出が比較的早かったため、データを収集し蓄積をされていって、同じ商品でも韓国での売り方とアメリカでの売り方を差別化していることが多いです。日本の場合は、商品をただ翻訳して日本の売り方で海外に販売しているケースが多いので、その辺はデータを使いこなして失敗を未然に防げるのかなと思います。
もう一つは、日本では絶対やらないことを海外でやってしまうという例です。これは例えば翻訳や文法のミス、デザインが現地の消費者に合っていないことなどが挙げられます。日本だと事前にリサーチを行い精査してから販売するところを、海外展開するにあたり同様の事前準備をしていないケースです。
インバウンドで一度日本を訪れた人が帰国後日本の商品を購入するために越境ECを利用するというケースが多いのですが、先日弊社が作成したホワイトペーパーで、中国の訪日観光客の中で「日本で買ったお土産と同じものをネットで見つけたが購入しなかった理由」として一番多く挙げられたのが「商品が本物かどうかわからなかった」でした。商品が本物かどうか疑われてしまう理由は、商品の説明文や画像から本物かどうか確信が持てないということですから、もったいないことをしてしまっているのです。二つ目の事例も、実際にアンケートを行いデータがあれば失敗せずに済んだのかなと考えられます。
下平氏:私が知っている中でわかりやすいのは越境ECの中国の例ですかね。とある会社さんが中国で200億円くらいですかね売り上げを作っていて、どんどん売れていって生産が追い付かないので工場も増設し生産できる数をどんどん増やしたんですけれども、急になぜか売れなくなった。在庫も工場も余ってしまったんです。話を聞くと、どこで誰が買っていたのかというデータが存在せず、なぜ売れていたのかがわかっていなかったということが判明しました。販売は代行の会社が行っており、データもパートナー企業から提供されていたわけではなくて、丸投げしていた。その結果売れなくなったときにどこにどういうアクションをとったらいいのかわからなくなってしまったそうです。結局かなりの売り上げを落としてしまって、そのままコロナ禍で大変なことになっているという話があります。
コロナで現地の消費者の声を掴みにくくなっている
Q2: technical × emotionalなデータ活用の可能性について、両社のシステムを使用することでどういった可能性が生まれるでしょうか?
下平氏:Helium10で取れるデータはテクニカルというか、客観的な生のデータなんですね。それに対しSynoで取れるデータはエモーショナルなデータなのかなと思っています。事前のデータ収集が課題だと先ほど申し上げましたが、データにもいろんな種類があると思っていて、僕の方のツールを使ってできることだけだど十分ではありません。商品を買うのは人間なので、人間の感性などエモーショナルな部分に影響を与える部分をどうデータとしてもっておくのか、またそれを一回行うだけでなく、トラックして変化を観察していかなきゃいけないと個人的には思っていて、それは我々のツールではできないところとなっています。
去年のこの時期僕はアメリカにいて、会社を作っていたんですね。ただ僕それ以来アメリカに行けてないわけですよ。なので、現地の生の情報をどう取得するのかが課題なんです。現地の友人に聞くことはできるが、なんか腹落ち感が薄い。本当にあってるのかな?友達だからポジショントークしてるんじゃないかなと思ってしまって。
先ほどお話がありましたが、商品の画像やデザインっていうのももちろんフリーランスの方などに依頼することはできるものの、以来する側が現地の人間ではない現地にいない場合またはターゲット層を理解しきれていない場合、その画像が本当に現地の人にマッチしているかの評価ができません。
現地の人がどう感じるかという部分をSynoのツールを使って知ることができるのならば、非常に有効活用できるのかなと感じています。
特に越境ECだとベースとなる部分っていうのはテクニカルなデータでとりつつ、言語や文化などエモーショナルな部分も大切に扱って行かなければならないと思うので、両社のサービスを活用することは可能性としてはものすごくあるのではないかなと感じています。
越境ECで活用できるデータを取得するためのシステム紹介
Helium10 を活用して、海外amazonでの市場規模を把握

Helium10は、Amazonを用いた越境ECでご活用いただける、正確で「気が利いた」データをご提供します。例えば日本のお米を海外で売れるか調査する際、Helium10を使うと、Amazon.com上で”Japanese rice”と関連したキーワードが一覧になって表示されます。また、それらのキーワードがAmazon上でどれくらい検索されているかを予測した検索ボリューム(市場の魅力度)や、カテゴリー別のランキング1位をとるために必要な販売数(競合のレベル)を客観的に判断することが可能です。
越境ECを行う際、その市場で商品が売れるかどうかの販売の判断材料として使用いただけるほか、実際に販売した後でもデータから市場を客観的に把握し戦略を立てるのにご活用いただけます。
また、競合商品の売り上げも閲覧することができるほか、Amazonで検索されたときに引っかかるキーワードの数が何個あるかを示す指標を提示いたします。これにより、他社の商品とのキーワード数の差を把握し、キーワード数を増やすための必要なアクションを起こすことができます。
グローバルアンケートシステムSyno Toolを使用したコンセプトテスト

Synoグローバル商品コンセプトテストでは、コンセプトテストの実行とアンケート結果の分析をいたします。まずは弊社のwebアンケートプラットフォームであるSyno Toolにログインしていただき、コンセプトテストのテンプレートからアンケート画面を完成させていただきます。次に、Synoの持つ80ヵ国の1億人以上のグローバルパネルネットワークを活用し、ご希望の対象のグループからアンケートを回収いたします。そこから集計を行い、データと分析結果をご提供するのが一連の流れです。下記は、実際にSynoグローバルコンセプトテストのトライアルにご協力頂いた企業様の事例(一部抜粋)です。

これらの分析結果をもとに以下のアクションを行うことで、越境ECにおける海外展開のROI(費用対効果)を最適化することが可能になります。
- 進出先の選択
- コンセプトのローカライゼーション
- 価格設定の見直し
- 商品概要の改善やSEO対策(キーワード)
- 改善点、購入基準、商品受容性などの結果を元にしたマーケティング(クリエイティブ)の改善
- 画像評価によるパッケージの制作やローカライゼーション
Syno Japanでは、アンケートリサーチをご提供するだけではなく、お客様の悩みや不安を解決すべく+αのサービスを提供しております。弊社プロダクトやグローバルリサーチについて、ご不明な点などございましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。