欧米と日本の調査会社の業務領域の違い|海外で活躍した日本人リサーチャーに直撃インタビュー②

本コラム「海外リサーチ最前線」では、海外調査(グローバルリサーチ)に特化しSynoJapanの様々な分野のエクスパートが、「海外リサーチ」をテーマに、国内と海外のリサーチ方法の違いや、海外のリサーチ手法の最新情報、海外リサーチをより身近に感じてもらえる情報などを定期的に紹介していきます。

前回はSyno JapanのCRO川口のバックグランドと海外でのリサーチ経験についてお話しいただきましたが、シリーズ第二弾は「日本と欧米のリサーチの違いとその背景」についてさらに詳しくお聞きしていきたいと思います。

前回の記事はこちら 欧米の市場調査はサイエンス。海外で活躍した日本人リサーチャーに直撃インタビュー①

今回は、マーケットリサーチについてのお話をお聞きしたいと思います。欧米と日本の調査会社の業務内容に大きな違いがあるのでしょうか?

日本の調査会社の業務は、データの収集と集計がそのほとんどで、欧米では調査会社とは言い難いです。欧米の調査会社は、独自の調査モデルを開発し、調査結果を評価するノーム値(基準値)を有し、調査結果を独自の分析モデルでレポートしてきます。調査会社は「当社で調査してください」ではなく、「当社の調査モデルを活用しませんか」と企業に売り込みに来ます。または、クライアントの課題をヒアリングし、調査を提案するなど、調査の企画、設計から、企業の課題を解決するコンサルティング的な能力を有しています。一方、企業側では調査会社のプロフェッショナル集団を使いこなすために、調査のスペシャリストが窓口になります。彼らは調査会社が提案するモデルが自社のために役立つのか見極めます。また、調査が必要になった部署から依頼を受けて、調査会社を探すとこもあります。

日本の調査会社も過去にはオリジナルの調査モデルや分析モデルを開発していましたが、オンライン調査の比重が高まるにつれて、システム会社の体が強まり、オリジナルの調査モデルを開発したりカスタマイズしたりすることは、ほとんど見られなくなりました。調査を依頼したときに設問項目の質問文や選択肢について表現など簡単なアドバイスなどはしてくれますが、クライアントの課題に合わせた調査の企画や設計、分析に関するアドバイス、分析から得られる所見や提言までは積極的に取り組んでくれません。

なぜ調査会社の業務内容にそのような差が生じてしまったのでしょうか?どのような要因が考えられますか?

前回お話ししたカルフォルニア大学の例もそうなのですが、まず日本と欧米の調査会社の特徴の違いを生じさせている大きな要因として大学等における調査スペシャリストの育成環境が挙げられます。日本では、大学をはじめ学術的なトレーニングを受けたスペシャリストがほとんどいないのです。最近になってマーケティング調査論などを講義する大学があるようですが、調査モデルの開発といった研究活動は活発ではありません。他にも、ものを食べさせたり、使わせたりしながら調査するセンソリー調査などは皆無です。

一概に消費者を対象とした調査といっても、欧米では様々な分野があり、心理学、統計学、精神物理学、生物学などなど、バックグランドとなるサイエンスも様々ですし、学部もマーケティング、経営工学、食品工学、心理学など多様な学部で研究が進められています。どちらかというと、文系よりも理系の学部での存在感がありますが、それはサイエンスがベースとなっているからではないでしょうか?

日本では調査とサイエンスはなかなか結び付かないと思いますが、それこそが教育及び研究環境の違いを象徴しているのかもしれません。サイエンスは絶えず新しいことを創造し、応用も自由自在です。サイエンスがベースにあるということは調査モデルの開発にも当然影響します。

教育が強化されているということは、それだけ社会で必要されているからだと思うのですが、その点についてはどうでしょうか?

教育環境の違いを生じさせる要因は、やはり社会環境が大きいです。一般的に社会が力を注ぎ、興味を持たれている分野の学問は活性化していきますが、そうでないとなかなか活性化していかないものです。残念ながら、日本の多くの企業は調査を判断材料にしたり、リテラシーにしたりすることはあまりありません。日本は、世界でも数少ない単一民族、単一言語、同所得の国で、同じ日本人が日本人向けの商品を開発するので、マーケティングや商品開発にそれほど調査に頼らなくても済んだのではないでしょうか。または、調査に勝る職人技があったからともいえます。

アメリカを例にとると、人種、所得階層、言語、宗教が多種多様に混在していますし、市場規模が大きいために大量生産がベースになります。そうなると、計画段階からできるだけ正確な消費者のデータが不可欠で、データによって意思決定を行い、ビジネスを組み立てていきます。データによって莫大な予算を運用することになるわけですから、調査は重視されますし、クオリティーの高い調査にはお金をかけます。

たしかに、調査の重要度の違いは社会構造の違いが大きいですよね。また、調査コストもクオリティーによって幅があるほうです。次回は、日本と欧米の調査コストの違いについて詳しくお聞きしたいと思います。

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